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January 13, 2005

さすらいのベーシスト・N子

 N子はシルバーのブレスレットを邪魔そうに手繰っては、ベースギターを弾き始めた。太いベースの弦を押さえる細い指はしっかりとフレットを押さえている。
スケールもコードも知らない、耳で聞いてコピーするいわゆる耳コピーのベース。
「どーなのよ、いける私?」睨みつけるような目で健太を見つめる。
健太が元ベース・マンだったのを知って(ギタリストでもあったけど)、彼女の腕に対する健太の評価を知りたいのだ。
細い指には似合わない握力。規則正しく足で取るリズム、音から音へ移るスピード感とフィーリング。文句はない。
しかしプロでやっていくには、まだまだ心もとない。
いくらハードロックのベースをやるにしろ、せめて簡単なスケールやコードぐらい覚えないと話しにならない。

 30歳。彼女は今岐路に立っている。
今まで若さのみで押し通してきた人生。ふとわれを振り返ってみると、何の積み重ねもないうつろな自分をそこに見た。一年ほど前に結成したバンドは空中分解。
スポンサーも付いて一見前途洋々だったバンド人生も一瞬の夢に終わった今、何とか一度バンドとして成功したい。
「今命をかけられるのは、ベース、ベースしかない!」
N子の目はそう言って健太を見つめる。

 あの世界でやっていくのは、並大抵のことではないのは誰でも知っている。
健太もあの世界では、無慈悲な神の前に何度立たされたことか!
実力もさることながら、つきのない奴は真っ先に見放される。
「努力=成功」と言う図式が一番通用しないのもこの世界なのだ。

 ただ、人間としてこの世に存在する限り、人は常に達成感を求める。
成功に向かって走り続けた結果、たとえそれが成功しなくても後悔のない人生を送ろうとする。
正しい生き方だと思う。

 頑張れN子!

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