ここのマルカイで今日は買い物!
そこを出るとすぐにこの辺にくる、、。
ワーオ!今日のアラモアナ・ビーチ最高だね!
公園の芝でボールゲームを楽しむロコボーイたち。
おっと!これはいけません、、。でも健太がカメラを向けてるのを承知で勝手にこの人がこのシーンに入ってきたんだ、It's not my fault、、、、(汗)。
小樽運河前の人力車。
うーむ、ここでラーメンが食べられなかったのにとても悔いが残ってる、、(汗)。
キャーキャー騒いでいた女子高生。タクシー運ちゃんとなにやら交渉中!
コージさんに車を停めてもらって撮った「羊蹄山」!
小説「健太少年」最終回
翌日の札幌地区はそれまでとは打って変わって早朝から雨だった。
コージさんはその雨の中小樽につれて言ってくれるという。
小樽と言えばかつて映画や歌の舞台として何度も取り上げられたところ。既に観光地としても有名な場所だ。
「あたし一度で良いから小樽に行って見たかったの。何だかとてもロマンチックな街、、、っていうイメージがあるじゃん!」
とんまの目が輝いている。
そういわれれば「小樽」は女性に人気がありそうなイメージがある。
雨に霞む札幌の町を後に、コージさんのでっかいトヨタの4駆が水しぶきを上げて走ってゆく。
雨の小樽の街はまさにとんまの言う通りロマンチックそのまま、傘を差した女子高生がキャッキャ騒いで通り過ぎた。彼女たちも雨の小樽を思いっきり楽しんでいるようだ。
メイン通りの脇にはあの有名な小樽運河があって倉庫が並んでいる。
そしてその反対側には沢山のお土産やさんが並んでいる。
その中でふと目に留まったのが「ガラス細工」の店だった。
コージさんの話では小樽は「ガラス細工」で有名なところだと言う。
とんまはさっきの女子高生のように、キャッキャ言ってその店に飛び込んでいった。
「これ、可愛いわね!」
とんまがあるガラス細工の前で動かない。
見るとそれは丁度コーヒーのミルク注しによさそうな透明の容器だ。
健太たちはハワイで毎朝コーヒーを飲むのでこれがあれば、毎朝このロマンチックな小樽の街を思い出せる。
「それ、買おうよ!」
値段は、、安くはないけど絶対欲しかった!
小樽を後にしてコージさんの車は「羊蹄山」へ向かう。
幸い雨は大分小降りになってきた。
それでも羊蹄山は残念ながら裾野だけが見えて、その頂きは大きな雲に覆われていた。
「これが『蝦夷[えぞ]富士』って言われる、羊蹄山か!」
健太はコージさんに車を停めてもらってカメラを構えた。
見えるのは裾野とは言っても、まだ山肌には雪が残っている。
その後雨は降ったり止んだり、
数々の名所を通って車はいよいよ帰路についた。
山間部を走っている途中でコージさんが言った。
「この辺りはさくらんぼ狩りで有名なとことろで、別名フルーツ街道、って言うんですよ!」
なるほど車窓にはリンゴの木や桃の木、さらにはぶどう棚も見える。
北海道の道は走る車の数が少ないので結構スピードが出せちゃう。
車がトンネルに入ってこの先は「定山渓」、、って言うところで突然とんまの携帯が鳴った。
「もしもし?えつ、健太ですか?健太、何だか良く聞こえないけど、黒田さんって言ってるわよ、、」
勝ちゃんには昨日とんまの携帯の番号を知らせてあった。
慌ててとんまから携帯を受け取る健太。
「もしもし!」
「おー、健太か!俺だ、勝だよ」
「あー、か、勝ちゃん」
「今何処にいるんだ?」
「今車の中だけど、丁度定山渓辺り、札幌に向かってるところなんだ、、」
「よし、じゃあ健太がホテルに着くのは何時ごろかなあ、、?」
「多分5時半ごろには何とか、、ねえコージさん?」
頷くコージさん。
「分かった。じゃあホテルのロビーに5時半に行く」
「分かった。じゃあ後でね!」
勝ちゃんは電話を切った。
「とんま、勝ちゃんに会える、勝ちゃんに会えるんだ!」
健太の胸が急にどきどき、
その高鳴る音が皆に聞こえるんじゃないかと思うほど激しくなった。
<なんて言っても50年振りだもんなあ、、、、>
コージさんは車のスピードを上げた。
別に5時半に間に合わないわけじゃないけど、少しでも早く着いてくれようとしているんだ。
車が定山渓の温泉街に入った時、突然パトカーのサイレンが鳴った!
「やばい!やられた!」
「えっ、やられたって?」
健太ととんまの首筋に緊張が走った。
コージさんが車を停めた。
「あー、すいません。
ここじゃあ通行の邪魔になるのでその脇を左に入っていただけますか、、」
ポリスがじろじろ車内を見回しながらそんな指示をした。
日本のポリスはハワイと違ってやけに低姿勢だね、、。
ひとしきり書類にサインをさせられたコージさん。
ポリスカーが去っていった。
心配でしょうがない健太ととんま。
「で、幾ら取られるんですか?」
「なーに、12000円ですよ」
コージさんはサラっと言ってのけた。
太っ腹のコージさん、
まるで気にしてないみたいだ。
「普通は1万9000円くらい取られるんですが、安かったですよ、ははは!」
こんな時に笑えるコージさんがとても頼もしく思える。
その時また携帯が鳴った。
「もしもし?、、、健太、雅さんですって、、」
雅さんは札幌のミュージシャン。もう長い付き合いをさせてもらっている。
雅さんとは今晩6時半から夕食の約束になっていた。
「健太さん!大変だ!」
雅さんは電話の向こうでかなり興奮しているようだ。
「どうしたんですか、雅さん?」
「け、健太さんのホテルって、札幌駅前のTインですよね?」
「そうだけど、、?」
「いまさっきTVでやってたんだけど、そのTインの9階で塩素ガスを使った自殺があったらしいんですよ!」
「えつ!き、9階でですか?それって健太たちの階ですよ!」
「本当ですか!そりゃ大変だ!今消防車とか警察とか色んな車が来て、ホテルには入れないようですがねえ、、」
雅さんとの会話の一部始終を聞いていたとんまとコージさんの顔が、緊張で引きつっている。
車は札幌市内へ入った。
その時また携帯が鳴った。
雅さんだ。
「健太さん!健太さんたちのTインは札幌駅前の北口ですか、それとも南口ですか?」
「南口です、、、」
「わーよかった!自殺のあったのは北口のTインだったようです!」
「なーんだ、良かった!どうしようかって今皆で悩んでたんですよ!」
ほっとする健太。
Tインは札幌駅付近だけで4軒のホテルを営業している。
幸い自殺のあったのは駅の反対側のTインだったようだ。
ホテルへは5時に到着。
5時半には勝ちゃんがロービーに来てくれる。
雅さんとの夕食は6時半なので会えるのはたった1時間だ。
シャワーを浴びてた後即ロビーへ降りる健太ととんま。
どちらかと言うとビジネス・ホテルのTインのロビーは狭い。
健太の目は勝ちゃんの姿を求めてた。
すると一番ドア側に近いソファーに一人の紳士が座っていた。
<勝ちゃんだ!>
50年振りと言ってもあの勝ちゃんのあの頃の面影はそのまま残っている!
走って近づく健太。
「勝ちゃん!」
ソファーから立ち上がる勝ちゃん。
「おー!健太じゃないか!」
健太は勝ちゃんの差し出した手を力いっぱい握り絞めた。
勝ちゃんの目が涙目になっている。
健太の目からはもうとっくに一筋の水滴がこぼれ落ちていた。
時間はない。
次から次へと話が弾む。
勝ちゃんの声も健太の声も興奮で高揚している。
ロビーを行き交う人々は「何事か?」と言った目つきでこっちを見ている。
あれからの互いの足跡、そして今の環境、、、話は尽きない。
「ところで勝ちゃん、兄貴の黒さんはどうしているの?」
「あー、よっちゃんね」
勝ちゃんの兄貴で高井戸の健太の家に下宿をしていた黒さんは、「吉雄」さんと言う名前だ。
「よっちゃんはね、T映の内部派閥争いに巻き込まれて、T映ビデオの社長になったんだ。
本人はT本社の社長を狙っていたらしいんだけどね、、」
「T映ビデオの社長?凄いじゃん!だってあの会社もT映の本編をかなり手がけていたじゃないの」
「まあね、、。しかし結局去年、退社して引退だ」
「なーんだもしそれを知っていたら、黒さんを尋ねて行ってスターにしてもらえたかもしれないのに、、」
「そうだな、健太は松竹にいたんだってな?」
「そうなんだ。全く売れなくて結局ミュージシャンになった、、」
「そうか。でもそれでハワイに行けたんだろ?それでよかったじゃないか。それにこんなに素敵な奥さんに出会えたし」
やたら照れてるとんま、、。
「それで、黒さんの連絡先分かるかなあ?是非黒さんにも会いたいんだけど !」
「分かった。今は持ってないから明日連絡しよう」
と、その時丁度夕食の約束の雅さんが迎に来てくれた。
名残惜しいけど、ひとまずこれでお別れしなければならない。
別れ際に健太はしっかり勝ちゃんの手を握った。
でもそれだけでは足らなかった。
思いっきり勝ちゃんの身体を引き寄せて強く抱きしめた、、。
「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。番号を確認してお掛け直してください、、」
健太たちは東京へ戻った。
勝ちゃんにもらった「黒さん」の電話番号に何度掛けても、そんな案内ばかり流れる。
<念のため、よっちゃんの息子の番号も上げて置くから、、、>
勝ちゃんからはそんな番号も貰っていたので、早速そっちへ電話を掛けてみた。
「もしもし黒田です」
「あのー、私、、、」
電話に出たのは黒さんの息子さんだった。
一部始終を話す健太。
「あー、そうですか、、、」
息子さんの声は若い頃の黒さんの声にそっくりだ。
「で、新しい電話番号、頂けますか?」
「分かりました。しかし、、、」
「何か?」
「実は、、父は認知症になってるんですよ、、」
「何ですって!」
「古い記憶はあるので、きっと健太さんの事は覚えているでしょうが、
最近起こった事は一切覚えてないんです」
「そ、それは、、!」
「一寸した何か起こると、すぐ会社に出かけちゃうんです、、、」
「、、、、、」
「ですから、出来たらそっとしておいてやって頂けたら助かるんですが、、、」
今回の北海道旅行、
最高に楽しかった。!
特に最大の目的だったあの「勝ちゃん」にも会えた事は、
健太の人生の新しいステプうになるような気がしてならない。
黒さんがそんな事になってて、
会えなかった事はとても残念で悲しいことだけど、
時は流れてゆくもの、
今では健太のおっかさんもいないんだ、、、。
だけどそうした全ての事を受け入れて生きて行かなければならないのが、
人生。
最近物忘れの激しい健太ととんま、
せめて黒さんのようにならないように、
常に頭をシャープにしていたいものだ、、。
完
PS:コージさんには申し訳ないのでポリスのチケット代金、
失礼だとは思いましたが健太たちに払わせていただきました。
Recent Comments